鉄不足の解析貧血でなくても、鉄を飲んだ人は疲れと記憶の点数が良かった
紹介する論文
Neuroscience & Biobehavioral Reviews・2025年・系統的レビュー・メタ解析・18研究・1,408人
貧血でない子ども・10代と月経のある大人に鉄を補った研究を集めた解析
Psychiatric and cognitive outcomes of iron supplementation in non-anemic children, adolescents, and menstruating adults: A meta-analysis and systematic review. Neurosci Biobehav Rev 2025;178:106372
論文の要旨(PubMed)この記事の要点
- 疲れ: 貧血のない鉄不足の人の試験をまとめた解析で、飲んだ人は疲れの点数が良かった
- 記憶: 短期記憶の成績も、飲んだ人のほうが高かった
- 当てはまる人: 鉄不足でない人では差が出ず、効果が報告されたのは鉄の蓄えが少ない人
- 自分が当てはまるかは、鉄は足りている?で血液検査の見方を確かめる
疲れ・不安・記憶比較試験で、飲んだ人の点数が良かった
貧血はないものの、鉄が不足している人の試験をまとめた解析(メタ解析)が、2025年に発表されました。
偽薬(有効成分を含まない錠剤)と比べた試験を合わせると、鉄を飲んだ人は、疲れと不安の点数が良く、短期記憶の成績も高かったと報告されています。
差の大きさは、効果量という数字で表されています。0なら差がなく、大きいほど飲んだ人で良かったことを示します。
バーが長いほど、偽薬を飲んだ人との差が大きいことを示します。
出典: PubMed 40945632(数値をもとに当編集部が作図)
注意力と気分の落ち込み(抑うつ)の点数には、差がありませんでした。
数値の詳細(論文・資料の値)
- 比較試験での疲れ(効果量)
d = 0.34 - 比較試験での不安(効果量)
d = 0.34 - 比較試験での体の調子(効果量)
d = 0.42 - 比較試験での知能検査の点数(効果量)
d = 0.46 - 比較試験での短期記憶(効果量)
d = 0.53 - 比較試験で差がなかった項目
注意・抑うつは差なし
この結果をどう読むか当てはまるのは、鉄の蓄えが少ない人
当てはまる人鉄不足でない人では差が出なかった
解析では、鉄不足の人を除くと、飲んだ効果は見られませんでした。鉄の蓄えとは、血液検査のフェリチンで測る、体にためてある鉄の量です。
参加者の大半は、月経のある大人1,176人でした。月経で鉄を失う女性は、貧血がなくても蓄えが少ないことがあります。
差の大きさ疲れの点数の下がり方で比べる
疲れの効果量は、小さめから中くらいです。元になった試験の一つでは、医薬品の鉄剤を1日80mg、12週使いました。
この試験で疲れの点数は、鉄を飲んだ人で47.7%、偽薬の人で28.8%下がりました。
鉄の蓄え血液検査のフェリチンで分かる
当てはまるかは、血液検査のフェリチンで分かります。健診の項目に無いときは、医療機関で測ってもらえます。
疲れの試験の一つでは、フェリチンが50µg/L以下の女性で点数が良くなっていました。値の見方と、不足しやすい人は鉄は足りている?にまとめています。
数値の詳細(論文・資料の値)
- 鉄が不足しているかで結果が変わるか(下位集団)
鉄不足の人だけの集団・子ども10代・月経のある大人で結果は一貫。鉄不足の参加者を除くと効果はなかった - 集めた研究の内訳と参加者
18研究(比較試験12・前後比較6)、うち16研究を統合。参加者は月経のある大人1,176人(平均34.6歳)、子ども・10代204人(平均13.9歳、女性56%) - 疲労スコアの変化(Current and Past Psychological Scale)
鉄群-47.7% vsプラセボ群-28.8%(差-18.9%、95%CI -34.5〜-3.2、p=0.02)/生活の質 p=0.2・抑うつ p=0.97・不安 p=0.5(有意差なし) - 疲労の視覚的アナログスケール(10点)の変化
鉄群-1.82/6.37点(29%)vsプラセボ群-0.85/6.46点(13%)、差0.95点(95%CI 0.32〜1.62、p=0.004)/サブ解析でフェリチン50µg/L以下の女性のみ改善 - 試験で使われた鉄の量と期間(疲労の試験)
硫酸第一鉄 元素鉄80mg/日・12週 - 試験で使われた鉄の量と期間(疲労の試験)
硫酸第一鉄 元素鉄80mg/日・4週 - 自覚的疲労の標準化平均差(メタ分析)
SMD -0.38(95%CI -0.52〜-0.23、I2 0%、4試験、714人)
試験の条件と副作用大半は月経のある大人、胃腸の症状に注意
まとめた研究は18研究で、偽薬と比べた試験はそのうち12件です。参加者には、子どもと10代も含まれていました。
知能検査の点数については、別の解析で、貧血でない参加者に効果が見られなかったと報告されています。
残りは、飲む前と後の点数を比べた研究です。偽薬の群が無いため、自然に良くなった分と区別できません。
疲れの試験で使われたのは、医薬品の鉄剤(硫酸第一鉄)を1日80mg、4週〜12週です。医師が治療に使う量で、自分で選んで続ける量ではありません。
数値の詳細(論文・資料の値)
- 論文の基本情報(論文カード用)
Neuroscience & Biobehavioral Reviews・2025年・系統的レビュー・メタ解析・18研究・1,408人 - 集めた研究の内訳と参加者
18研究(比較試験12・前後比較6)、うち16研究を統合。参加者は月経のある大人1,176人(平均34.6歳)、子ども・10代204人(平均13.9歳、女性56%) - 前後比較の研究での変化(効果量)
抑うつ d = 0.93・疲れ d = 1.01・精神症状全体 d = 1.13 - 注意・集中力の標準化平均差と、非貧血者での知能指数(IQ)への効果
注意・集中 SMD 0.59(95%CI 0.29〜0.90)/非貧血の参加者ではIQへの効果なし
- 疲れやだるさが続いている方
- 男性・月経のない女性で、鉄不足と言われた方(先に原因を調べてもらうため)
- 服用中の薬がある方、妊娠中・授乳中の方、妊娠を考えている方
サプリメントは、病気の治療や予防に使うものではありません。
副作用毎日飲むと、胃腸の症状が増える
月経のある女性の試験をまとめた別の解析では、毎日の鉄で胃腸の副作用が増えていました。飲まない人を1とすると1.99倍で、便秘や軟便が多く、吐き気には差がありませんでした。
飲む量とタイミングで負担を減らせるかは、鉄サプリの飲み方にまとめています。
数値の詳細(論文・資料の値)
- 毎日の鉄補給の副作用(月経のある女性、コクランレビュー)
胃腸の副作用 RR 1.99(95%CI 1.26〜3.12、5試験・521人)/軟便・下痢 RR 2.13(1.10〜4.11、6試験)/便秘 RR 2.07(1.35〜3.17、8試験)/悪心は差なし(RR 1.19、0.78〜1.82)
まとめ
- 試験では、貧血のない鉄不足の人で、飲んだ人の疲れと記憶の点数が良かった。鉄不足でない人では差が出なかった
次に読むもの
この記事で使った数値の一覧(17件)
- 論文の基本情報(論文カード用)Neuroscience & Biobehavioral Reviews・2025年・系統的レビュー・メタ解析・18研究・1,408人対象: 貧血でない子ども・10代と月経のある大人に鉄を補った研究を集めた解析紹介する論文は、2025年に Neuroscience & Biobehavioral Reviewsに掲載された系統的レビュー・メタ解析で、18研究・1,408人を対象にした。[出典1]
- 集めた研究の内訳と参加者18研究(比較試験12・前後比較6)、うち16研究を統合。参加者は月経のある大人1,176人(平均34.6歳)、子ども・10代204人(平均13.9歳、女性56%)対象: 貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人集めた18研究のうち、偽薬と比べた比較試験は12、飲む前後を比べた研究は6で、16研究を統合した。参加者の大半は月経のある大人だった。[出典1]
- 比較試験での疲れ(効果量)d = 0.34対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人比較試験を合わせると、鉄を飲んだ人は偽薬の人より疲れの症状が少なかった(効果量0.34)。[出典1]
- 比較試験での不安(効果量)d = 0.34対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人比較試験を合わせると、鉄を飲んだ人は偽薬の人より不安の症状が少なかった(効果量0.34)。[出典1]
- 比較試験での体の調子(効果量)d = 0.42対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人比較試験を合わせると、鉄を飲んだ人は偽薬の人より体の調子(身体面の健康感)の点数が良かった(効果量0.42)。[出典1]
- 比較試験での知能検査の点数(効果量)d = 0.46対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人比較試験を合わせると、鉄を飲んだ人は偽薬の人より知能検査の点数が高かった(効果量0.46)。[出典1]
- 比較試験での短期記憶(効果量)d = 0.53対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人比較試験を合わせると、鉄を飲んだ人は偽薬の人より短期記憶の成績が良かった(効果量0.53)。[出典1]
- 比較試験で差がなかった項目注意・抑うつは差なし対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人比較試験を合わせると、注意と抑うつの症状には、鉄と偽薬で差がなかった。[出典1]
- 前後比較の研究での変化(効果量)抑うつ d = 0.93・疲れ d = 1.01・精神症状全体 d = 1.13対象: 飲む前と後を比べた研究(偽薬の群が無い)偽薬の群が無い前後比較の研究では、抑うつ・疲れ・精神症状全体の点数が飲んだ後に良くなっていた。[出典1]
- 鉄が不足しているかで結果が変わるか(下位集団)鉄不足の人だけの集団・子ども10代・月経のある大人で結果は一貫。鉄不足の参加者を除くと効果はなかった対象: 比較試験と前後比較の下位集団の解析鉄不足の人だけの集団、子ども・10代、月経のある大人のどれで見ても結果は同じ向きだった。一方、鉄不足の参加者を除くと、鉄を飲んだ効果は見られなかった。[出典1]
- 疲労スコアの変化(Current and Past Psychological Scale)鉄群-47.7% vsプラセボ群-28.8%(差-18.9%、95%CI -34.5〜-3.2、p=0.02)/生活の質 p=0.2・抑うつ p=0.97・不安 p=0.5(有意差なし)対象: 18〜53歳の非貧血・フェリチン50µg/L未満・疲労を訴える女性 n=198(フランス)疲労を訴える非貧血でフェリチン50µg/L未満の女性198人に硫酸第一鉄(元素鉄80mg/日)を12週与えると、疲労スコアはプラセボより18.9%多く低下したが、生活の質・抑うつ・不安には有意差がなかった。[出典2]
- 疲労の視覚的アナログスケール(10点)の変化鉄群-1.82/6.37点(29%)vsプラセボ群-0.85/6.46点(13%)、差0.95点(95%CI 0.32〜1.62、p=0.004)/サブ解析でフェリチン50µg/L以下の女性のみ改善対象: 18〜55歳の非貧血で原因不明の疲労のある女性 n=144(スイス)原因不明の疲労のある非貧血女性144人に硫酸第一鉄(元素鉄80mg/日)を4週与えると、疲労はプラセボより0.95点多く改善し、効果はフェリチン50µg/L以下の女性に限られた。[出典3]
- 自覚的疲労の標準化平均差(メタ分析)SMD -0.38(95%CI -0.52〜-0.23、I2 0%、4試験、714人)対象: 鉄欠乏のある非貧血の成人(RCT 18試験・計1170人のうち、疲労の解析は4試験)鉄欠乏のある非貧血の成人を対象にしたRCTのメタ分析で、鉄の補給は自己申告の疲労を減らした(SMD -0.38)。[出典4]
- 注意・集中力の標準化平均差と、非貧血者での知能指数(IQ)への効果注意・集中 SMD 0.59(95%CI 0.29〜0.90)/非貧血の参加者ではIQへの効果なし対象: 6歳以上の子ども・思春期・女性(RCT 14試験、男性・高齢者の試験なし)鉄補給のRCT 14試験のメタ分析で、注意・集中は改善した(SMD 0.59)が、非貧血の参加者では知能指数への効果はなく、記憶・精神運動にも効果はなかった。[出典5]
- 試験で使われた鉄の量と期間(疲労の試験)硫酸第一鉄 元素鉄80mg/日・12週対象: 18〜53歳の非貧血・フェリチン50µg/L未満・疲労を訴える女性 n=198(フランス)鉄群 n=102・プラセボ群 n=96。医薬品として使われる量の鉄剤を用いた試験。[出典2]
- 試験で使われた鉄の量と期間(疲労の試験)硫酸第一鉄 元素鉄80mg/日・4週対象: 18〜55歳の非貧血で原因不明の疲労のある女性 n=144(スイス)鉄群 n=75・プラセボ群 n=69。医薬品として使われる量の鉄剤を用いた試験。[出典3]
- 毎日の鉄補給の副作用(月経のある女性、コクランレビュー)胃腸の副作用 RR 1.99(95%CI 1.26〜3.12、5試験・521人)/軟便・下痢 RR 2.13(1.10〜4.11、6試験)/便秘 RR 2.07(1.35〜3.17、8試験)/悪心は差なし(RR 1.19、0.78〜1.82)対象: 月経のある女性(RCT 67試験・8506人のうち副作用を報告した試験)月経のある女性への毎日の鉄補給のコクランレビューでは、胃腸の副作用がコントロールの約2倍(RR 1.99)、便秘が2.07倍、軟便・下痢が2.13倍で、悪心には差がなかった。[出典6]
根拠一覧
論文・資料の一覧(6件)
- Psychiatric and cognitive outcomes of iron supplementation in non-anemic children, adolescents, and menstruating adults: A meta-analysis and systematic review. Neurosci Biobehav Rev 2025;178:106372 — 原典(取得日:2026-10-28)
- Effect of iron supplementation on fatigue in nonanemic menstruating women with low ferritin: a randomized controlled trial. — 原典(取得日:2026-10-24)
- Iron supplementation for unexplained fatigue in non-anaemic women: double blind randomised placebo controlled trial. — 原典(取得日:2026-10-24)
- Efficacy of iron supplementation on fatigue and physical capacity in non-anaemic iron-deficient adults: a systematic review of randomised controlled trials. — 原典(取得日:2026-10-24)
- The effects of oral iron supplementation on cognition in older children and adults: a systematic review and meta-analysis. — 原典(取得日:2026-10-24)
- Daily iron supplementation for improving anaemia, iron status and health in menstruating women. — 原典(取得日:2026-10-24)
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