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鉄不足の解析貧血でなくても、鉄を飲んだ人は疲れと記憶の点数が良かった

新しい論文 最終更新: 2026-10-28 / からだ事典編集部

紹介する論文

Neuroscience & Biobehavioral Reviews・2025年・系統的レビュー・メタ解析・18研究・1,408人

貧血でない子ども・10代と月経のある大人に鉄を補った研究を集めた解析

Psychiatric and cognitive outcomes of iron supplementation in non-anemic children, adolescents, and menstruating adults: A meta-analysis and systematic review. Neurosci Biobehav Rev 2025;178:106372

論文の要旨(PubMed)

この記事の要点

  • 疲れ: 貧血のない鉄不足の人の試験をまとめた解析で、飲んだ人は疲れの点数が良かった
  • 記憶: 短期記憶の成績も、飲んだ人のほうが高かった
  • 当てはまる人: 鉄不足でない人では差が出ず、効果が報告されたのは鉄の蓄えが少ない人
  • 自分が当てはまるかは、鉄は足りている?で血液検査の見方を確かめる
この記事は、医師の診察や治療に代わるものではありません。免責事項

疲れ・不安・記憶比較試験で、飲んだ人の点数が良かった

貧血はないものの、鉄が不足している人の試験をまとめた解析(メタ解析)が、2025年に発表されました。

偽薬(有効成分を含まない錠剤)と比べた試験を合わせると、鉄を飲んだ人は、疲れと不安の点数が良く、短期記憶の成績も高かったと報告されています。

差の大きさは、効果量という数字で表されています。0なら差がなく、大きいほど飲んだ人で良かったことを示します。

飲んだ人のほうが良かった項目(効果量)
短期記憶の成績0.53
知能検査の点数0.46
体の調子の点数0.42
疲れの少なさ0.34
不安の少なさ0.34

バーが長いほど、偽薬を飲んだ人との差が大きいことを示します。
出典: PubMed 40945632(数値をもとに当編集部が作図)

注意力と気分の落ち込み(抑うつ)の点数には、差がありませんでした。

数値の詳細(論文・資料の値)
  • 比較試験での疲れ(効果量)
    d = 0.34
  • 比較試験での不安(効果量)
    d = 0.34
  • 比較試験での体の調子(効果量)
    d = 0.42
  • 比較試験での知能検査の点数(効果量)
    d = 0.46
  • 比較試験での短期記憶(効果量)
    d = 0.53
  • 比較試験で差がなかった項目
    注意・抑うつは差なし

この結果をどう読むか当てはまるのは、鉄の蓄えが少ない人

当てはまる人鉄不足でない人では差が出なかった

解析では、鉄不足の人を除くと、飲んだ効果は見られませんでした。鉄の蓄えとは、血液検査のフェリチンで測る、体にためてある鉄の量です。

参加者の大半は、月経のある大人1,176人でした。月経で鉄を失う女性は、貧血がなくても蓄えが少ないことがあります。

差の大きさ疲れの点数の下がり方で比べる

疲れの効果量は、小さめから中くらいです。元になった試験の一つでは、医薬品の鉄剤を1日80mg、12週使いました。

この試験で疲れの点数は、鉄を飲んだ人で47.7%、偽薬の人で28.8%下がりました。

鉄の蓄え血液検査のフェリチンで分かる

当てはまるかは、血液検査のフェリチンで分かります。健診の項目に無いときは、医療機関で測ってもらえます。

疲れの試験の一つでは、フェリチンが50µg/L以下の女性で点数が良くなっていました。値の見方と、不足しやすい人は鉄は足りている?にまとめています。

数値の詳細(論文・資料の値)
  • 鉄が不足しているかで結果が変わるか(下位集団)
    鉄不足の人だけの集団・子ども10代・月経のある大人で結果は一貫。鉄不足の参加者を除くと効果はなかった
  • 集めた研究の内訳と参加者
    18研究(比較試験12・前後比較6)、うち16研究を統合。参加者は月経のある大人1,176人(平均34.6歳)、子ども・10代204人(平均13.9歳、女性56%)
  • 疲労スコアの変化(Current and Past Psychological Scale)
    鉄群-47.7% vsプラセボ群-28.8%(差-18.9%、95%CI -34.5〜-3.2、p=0.02)/生活の質 p=0.2・抑うつ p=0.97・不安 p=0.5(有意差なし)
  • 疲労の視覚的アナログスケール(10点)の変化
    鉄群-1.82/6.37点(29%)vsプラセボ群-0.85/6.46点(13%)、差0.95点(95%CI 0.32〜1.62、p=0.004)/サブ解析でフェリチン50µg/L以下の女性のみ改善
  • 試験で使われた鉄の量と期間(疲労の試験)
    硫酸第一鉄 元素鉄80mg/日・12週
  • 試験で使われた鉄の量と期間(疲労の試験)
    硫酸第一鉄 元素鉄80mg/日・4週
  • 自覚的疲労の標準化平均差(メタ分析)
    SMD -0.38(95%CI -0.52〜-0.23、I2 0%、4試験、714人)

試験の条件と副作用大半は月経のある大人、胃腸の症状に注意

まとめた研究は18研究で、偽薬と比べた試験はそのうち12件です。参加者には、子どもと10代も含まれていました。

知能検査の点数については、別の解析で、貧血でない参加者に効果が見られなかったと報告されています。

残りは、飲む前と後の点数を比べた研究です。偽薬の群が無いため、自然に良くなった分と区別できません。

疲れの試験で使われたのは、医薬品の鉄剤(硫酸第一鉄)を1日80mg、4週〜12週です。医師が治療に使う量で、自分で選んで続ける量ではありません。

数値の詳細(論文・資料の値)
  • 論文の基本情報(論文カード用)
    Neuroscience & Biobehavioral Reviews・2025年・系統的レビュー・メタ解析・18研究・1,408人
  • 集めた研究の内訳と参加者
    18研究(比較試験12・前後比較6)、うち16研究を統合。参加者は月経のある大人1,176人(平均34.6歳)、子ども・10代204人(平均13.9歳、女性56%)
  • 前後比較の研究での変化(効果量)
    抑うつ d = 0.93・疲れ d = 1.01・精神症状全体 d = 1.13
  • 注意・集中力の標準化平均差と、非貧血者での知能指数(IQ)への効果
    注意・集中 SMD 0.59(95%CI 0.29〜0.90)/非貧血の参加者ではIQへの効果なし
医師・薬剤師に相談してほしい方
  • 疲れやだるさが続いている方
  • 男性・月経のない女性で、鉄不足と言われた方(先に原因を調べてもらうため)
  • 服用中の薬がある方、妊娠中・授乳中の方、妊娠を考えている方

サプリメントは、病気の治療や予防に使うものではありません。

副作用毎日飲むと、胃腸の症状が増える

月経のある女性の試験をまとめた別の解析では、毎日の鉄で胃腸の副作用が増えていました。飲まない人を1とすると1.99倍で、便秘や軟便が多く、吐き気には差がありませんでした。

飲む量とタイミングで負担を減らせるかは、鉄サプリの飲み方にまとめています。

数値の詳細(論文・資料の値)
  • 毎日の鉄補給の副作用(月経のある女性、コクランレビュー)
    胃腸の副作用 RR 1.99(95%CI 1.26〜3.12、5試験・521人)/軟便・下痢 RR 2.13(1.10〜4.11、6試験)/便秘 RR 2.07(1.35〜3.17、8試験)/悪心は差なし(RR 1.19、0.78〜1.82)

まとめ

  • 試験では、貧血のない鉄不足の人で、飲んだ人の疲れと記憶の点数が良かった。鉄不足でない人では差が出なかった

次に読むもの

この記事で使った数値の一覧(17件)
  1. 論文の基本情報(論文カード用)
    Neuroscience & Biobehavioral Reviews・2025年・系統的レビュー・メタ解析・18研究・1,408人
    対象: 貧血でない子ども・10代と月経のある大人に鉄を補った研究を集めた解析
    紹介する論文は、2025年に Neuroscience & Biobehavioral Reviewsに掲載された系統的レビュー・メタ解析で、18研究・1,408人を対象にした。[出典1]
  2. 集めた研究の内訳と参加者
    18研究(比較試験12・前後比較6)、うち16研究を統合。参加者は月経のある大人1,176人(平均34.6歳)、子ども・10代204人(平均13.9歳、女性56%)
    対象: 貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人
    集めた18研究のうち、偽薬と比べた比較試験は12、飲む前後を比べた研究は6で、16研究を統合した。参加者の大半は月経のある大人だった。[出典1]
  3. 比較試験での疲れ(効果量)
    d = 0.34
    対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人
    比較試験を合わせると、鉄を飲んだ人は偽薬の人より疲れの症状が少なかった(効果量0.34)。[出典1]
  4. 比較試験での不安(効果量)
    d = 0.34
    対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人
    比較試験を合わせると、鉄を飲んだ人は偽薬の人より不安の症状が少なかった(効果量0.34)。[出典1]
  5. 比較試験での体の調子(効果量)
    d = 0.42
    対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人
    比較試験を合わせると、鉄を飲んだ人は偽薬の人より体の調子(身体面の健康感)の点数が良かった(効果量0.42)。[出典1]
  6. 比較試験での知能検査の点数(効果量)
    d = 0.46
    対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人
    比較試験を合わせると、鉄を飲んだ人は偽薬の人より知能検査の点数が高かった(効果量0.46)。[出典1]
  7. 比較試験での短期記憶(効果量)
    d = 0.53
    対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人
    比較試験を合わせると、鉄を飲んだ人は偽薬の人より短期記憶の成績が良かった(効果量0.53)。[出典1]
  8. 比較試験で差がなかった項目
    注意・抑うつは差なし
    対象: 比較試験(ランダム化・偽薬対照)をまとめた解析。対象は貧血でない子ども・10代(5〜17歳)と月経のある大人
    比較試験を合わせると、注意と抑うつの症状には、鉄と偽薬で差がなかった。[出典1]
  9. 前後比較の研究での変化(効果量)
    抑うつ d = 0.93・疲れ d = 1.01・精神症状全体 d = 1.13
    対象: 飲む前と後を比べた研究(偽薬の群が無い)
    偽薬の群が無い前後比較の研究では、抑うつ・疲れ・精神症状全体の点数が飲んだ後に良くなっていた。[出典1]
  10. 鉄が不足しているかで結果が変わるか(下位集団)
    鉄不足の人だけの集団・子ども10代・月経のある大人で結果は一貫。鉄不足の参加者を除くと効果はなかった
    対象: 比較試験と前後比較の下位集団の解析
    鉄不足の人だけの集団、子ども・10代、月経のある大人のどれで見ても結果は同じ向きだった。一方、鉄不足の参加者を除くと、鉄を飲んだ効果は見られなかった。[出典1]
  11. 疲労スコアの変化(Current and Past Psychological Scale)
    鉄群-47.7% vsプラセボ群-28.8%(差-18.9%、95%CI -34.5〜-3.2、p=0.02)/生活の質 p=0.2・抑うつ p=0.97・不安 p=0.5(有意差なし)
    対象: 18〜53歳の非貧血・フェリチン50µg/L未満・疲労を訴える女性 n=198(フランス)
    疲労を訴える非貧血でフェリチン50µg/L未満の女性198人に硫酸第一鉄(元素鉄80mg/日)を12週与えると、疲労スコアはプラセボより18.9%多く低下したが、生活の質・抑うつ・不安には有意差がなかった。[出典2]
  12. 疲労の視覚的アナログスケール(10点)の変化
    鉄群-1.82/6.37点(29%)vsプラセボ群-0.85/6.46点(13%)、差0.95点(95%CI 0.32〜1.62、p=0.004)/サブ解析でフェリチン50µg/L以下の女性のみ改善
    対象: 18〜55歳の非貧血で原因不明の疲労のある女性 n=144(スイス)
    原因不明の疲労のある非貧血女性144人に硫酸第一鉄(元素鉄80mg/日)を4週与えると、疲労はプラセボより0.95点多く改善し、効果はフェリチン50µg/L以下の女性に限られた。[出典3]
  13. 自覚的疲労の標準化平均差(メタ分析)
    SMD -0.38(95%CI -0.52〜-0.23、I2 0%、4試験、714人)
    対象: 鉄欠乏のある非貧血の成人(RCT 18試験・計1170人のうち、疲労の解析は4試験)
    鉄欠乏のある非貧血の成人を対象にしたRCTのメタ分析で、鉄の補給は自己申告の疲労を減らした(SMD -0.38)。[出典4]
  14. 注意・集中力の標準化平均差と、非貧血者での知能指数(IQ)への効果
    注意・集中 SMD 0.59(95%CI 0.29〜0.90)/非貧血の参加者ではIQへの効果なし
    対象: 6歳以上の子ども・思春期・女性(RCT 14試験、男性・高齢者の試験なし)
    鉄補給のRCT 14試験のメタ分析で、注意・集中は改善した(SMD 0.59)が、非貧血の参加者では知能指数への効果はなく、記憶・精神運動にも効果はなかった。[出典5]
  15. 試験で使われた鉄の量と期間(疲労の試験)
    硫酸第一鉄 元素鉄80mg/日・12週
    対象: 18〜53歳の非貧血・フェリチン50µg/L未満・疲労を訴える女性 n=198(フランス)
    鉄群 n=102・プラセボ群 n=96。医薬品として使われる量の鉄剤を用いた試験。[出典2]
  16. 試験で使われた鉄の量と期間(疲労の試験)
    硫酸第一鉄 元素鉄80mg/日・4週
    対象: 18〜55歳の非貧血で原因不明の疲労のある女性 n=144(スイス)
    鉄群 n=75・プラセボ群 n=69。医薬品として使われる量の鉄剤を用いた試験。[出典3]
  17. 毎日の鉄補給の副作用(月経のある女性、コクランレビュー)
    胃腸の副作用 RR 1.99(95%CI 1.26〜3.12、5試験・521人)/軟便・下痢 RR 2.13(1.10〜4.11、6試験)/便秘 RR 2.07(1.35〜3.17、8試験)/悪心は差なし(RR 1.19、0.78〜1.82)
    対象: 月経のある女性(RCT 67試験・8506人のうち副作用を報告した試験)
    月経のある女性への毎日の鉄補給のコクランレビューでは、胃腸の副作用がコントロールの約2倍(RR 1.99)、便秘が2.07倍、軟便・下痢が2.13倍で、悪心には差がなかった。[出典6]

根拠一覧

論文・資料の一覧(6件)
  1. Psychiatric and cognitive outcomes of iron supplementation in non-anemic children, adolescents, and menstruating adults: A meta-analysis and systematic review. Neurosci Biobehav Rev 2025;178:106372 — 原典(取得日:2026-10-28)
  2. Effect of iron supplementation on fatigue in nonanemic menstruating women with low ferritin: a randomized controlled trial. — 原典(取得日:2026-10-24)
  3. Iron supplementation for unexplained fatigue in non-anaemic women: double blind randomised placebo controlled trial. — 原典(取得日:2026-10-24)
  4. Efficacy of iron supplementation on fatigue and physical capacity in non-anaemic iron-deficient adults: a systematic review of randomised controlled trials. — 原典(取得日:2026-10-24)
  5. The effects of oral iron supplementation on cognition in older children and adults: a systematic review and meta-analysis. — 原典(取得日:2026-10-24)
  6. Daily iron supplementation for improving anaemia, iron status and health in menstruating women. — 原典(取得日:2026-10-24)

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